6月14日14:30~、自由学園明日館につのだたかしさんの音楽セレクト・ショップがオープンしました!
「セレクト・ショップ」...それは、つのださんの演奏会にかける思い。
"知らない音楽を聴くのは不安かもしれませんが、こう考えてみてください。バッハやモーツァルトみたいに大きなお店ではなく、亭主(=つのだ)のセレクト・ショップなのだと。しかも大通りではなく、ちょっと小径に入らないと見つからない音楽で、発見する喜び。それがリュート音楽であり、今回演奏する小品なのだと思います。...(
mejiro BALLより)"
「知る人ぞ知る」といったような音楽も、つのださんが亭主のお店なら気軽に聴けるような気がしますね!
実はこの日の演奏場所は最初、客席と同じフロアに設定されていたのです。でもリハーサル中にひょいと舞台へ上ったつのださん、響きを確認しながら
「こっちの方がいいね!」
急遽舞台上に配置換えされることになりました。筆者もつのださんが舞台で音を出されたその時、音響がハッと変わったのでビックリしたんですよ。
つのださんは照明にもこだわっておられ、自然光の入る会場の雰囲気を生かしたいと、ライトも弱めに設定されました。窓から差し込む陽の光って、普通のコンサートホールには無いですものね。
コンサートが始まると、会場は静寂に包まれました。静かに奏でられるリュートの旋律に、鳥の声や外で遊ぶ子どもたちの声が遠く重なって、なんともいえないいい感じ!
曲間にはつのださんによるお話もあり、リュートの歴史や仕組みなどが語られました。
つのださんによると、レオナルド・ダ・ヴィンチやシェイクスピアが生きた時代は、リュートが弾けることが文化的なことの象徴だったそうです。なので男性は競ってリュートを演奏し、憧れの女性へ歌を贈ったのだとか。「リュートが弾ける=女性にモテる」、という図式が成り立っていたらしい。。
「美しい男性が夜、女性の家の下でリュートを奏でると、窓がキィっと開いて・・・ロミオとジュリエットの名シーンを思い出してみてください。リュートは大きな音はしないですが、静かにひたひたと心の中にしみるような音楽なのですね。これがトランペットだと大変です(笑)」と、つのださん。た、確かに・・・
リュートではイギリス古謡、フランス、イタリアの舞曲、それにつのださんが大好きだという作曲家・ダウランドの作品が演奏されました。
休憩中は楽譜に視線が集中!
「読めないわ~!!御覧なさいな!」
とご婦人に言われ、筆者も覗き込んでみました。
う、タブラチュア譜だ。未知の言語に見える。。
(休憩時間は屋外でティータイム。雨が降らなくてよかった!)
後半は楽器をバロックギターに持ち替えての演奏。
クラシック、エレキ、フォーク、ベースなど、たくさんの種類があるギターですが、バロック・ギターはそこへ拡がる前の楽器だそうです。リュートに比べると「生き延びた」楽器なんですね~。
そしてこんな話も。。
つのださんは「タブラトゥーラ」という古楽器バンドを主宰されているのですが、そのメンバーで現在公開中の映画「花よりもなほ」の音楽を担当されているのです!その映画のチラシを持って、コマーシャルタイム♪
が、つのだ氏、主演の岡田准一さんのお顔を指して「
コレは私です」と発言。ちょ、ちょっと待ってくださいっ!(笑)
そんなつのださんはバンドのメンバーと一緒にちゃっかり出演もされているんですよ★音楽隊が通るシーンは要チェックです!「三味線を持ってる勇姿を見ていただきたい」とのこと(3秒程らしいのでお見逃しなく!)。映画
「花よりもなほ」公式サイトではつのださん率いる「タブラトゥーラ」の演奏する音楽が聴けますので、ぜひチェックしてみてください。タブラトゥーラの音楽を聴きに映画を観にいく、なんていうのもなんだか「通」っぽくてステキじゃないですか♪
後半のプログラムにはつのださん自作の曲も組み込まれ、映画用に作ったのに不採用になったという、いわくつきの楽曲「ラメント」も演奏されました。なんだか本当に悲しい(=ラメント)曲でしたねぇ・・・。
そしてアンコールにも自作の曲を披露してくださいました。スペイン語の歌も歌も!!
注:これは、「新しい自転車」という自作曲の説明をしているところです。
演奏会の後はつのださんを囲んでのお茶会も催されました。
最初は少し遠慮気味に遠巻きにしておられたお客様も、つのださんが楽器を取り出すとわらわらと集まってこられました。そしてどんどん質問が飛び出す!
お客様 : リュートはどうして20世紀になって復活したのですか?
つのださん : 復活はしていないんですよ。昔の楽器で古い曲を演奏しようということなんですが、ヨーロッパでも「知っているけど聴いたことがない」という人がたくさんいるわけです。日本の琵琶と同じですね。
古楽器といってもリュートやギターは少しそこから外れるんです。ルネサンス時代のものなのでバロック・ブームには入らないのです。「より大きな音を!」という文明のの中ですたれていったんですよ。
お客様 : 休憩中に楽譜を拝見したのですが、オタマジャクシじゃなくて読めませんでした。。
つのださん : 見たわね!!(笑) これはリュートの記譜法です。リュートは押さえる弦の場所によって音が微妙に違ってくるので、どこを押さえるかが書かれているのです。三味線と同じで、書かれた通りに押さえると作曲家の求めた音がそのまま出るのです。新作もこのタブラチュア楽譜で書かれています。
お客様 : いろんな種類の楽器を演奏していてこんがらがりませんか?調弦も違うと思うのですが。
つのださん : 心得ます!(笑)
(演奏も聴かせてくださいました!)
お客様 : (ギターを指して)この楽器はいくらくらいするんですか?
つのださん : 工房から直接買って50万円くらいでしょうか。ふつうに買うともっと高いですね。リュートは工房値段が高いので120万円くらいします。(場内どよめく)
リュートは製作者が全工程をひとりで作るので高いんですよ。僕は友人でスティーブン・ゴットリーという人の楽器を使っています。音質が好きなので。僕は音量を求めません。良い音がいい。「もっと鳴るように、大きいように」としていくことで、歴史は大きな間違いを犯した。ピアノも同じです。
(ピアノの話題が出たので筆者も質問!)
E.M : 現代のギターとの決定的な違いって何ですか?
つのださん : 音が全く違います。いまの楽器はどこも均等にきれいに鳴るように作られていますが、昔のは調弦が違うので弾けないんですよ。
お客様 : 木ネジを初めて見ました!
つのださん : 木ネジは押し込むから大変です(乾くと縮んで割れる、真夏は溶ける、などなど)。大変なのも楽器がすたれた原因ですが。大変なのを一緒に愛さないと!鉄ネジだと楽ですよ。でもブサイクでしょ。僕の目にはね。それぞれが好きなものを選べばいいと思います。
(↓サイン中・・・ サインには「To.○○」と、お客様のお名前を入れられていましたよ。)
次々と交わされたお客様とつのださんのQ&A。
つのださんのスタンスというか、楽器や音楽に対する深い愛情を垣間見れた気がしました。
会がお開きになり、お客様が帰ってから筆者はもうひとつ質問!
E.M : 一日の練習時間は限られていると思うのですが、いろんな種類の楽器をお持ちだと、どのように練習の配分をされるのですか?
つのださん : コンサートの予定に合わせています。ひとつの演奏会が終わると爪を落とします。「ああ、今日で爪が切れる」、と。そしてまた次の演奏会に向けて爪を伸ばすんです。
E.M : じゃあその演奏会に向けての期間中はひとつの楽器だけを練習されるということですか?
つのださん : 機能的にそういうふうになりますね。
E.M : なるほど~(やっぱりちゃんと計算して練習しなきゃだめんなんだなぁ)
いろんな話が聞けたお茶会が終わり、つのださんとスタッフ一同はスペイン料理店Spain Barにお邪魔して、"ハモンイベリコ"というハムなど、皆で仲良くいただきました。(個々の胃袋に入った高級ハムの枚数をめぐる確執が繰り広げられたことについては、敢えて触れないことにします…笑)こちらのお店にもぜひ音楽祭の協賛店になっていただきたいですね!
(E.M)